バイク用ユーザー車検:点検整備記録簿の書き方
バイク用点検記録簿の書き方
このページではバイクのユーザー車検に必要な点検整備記録簿の作成方法を記載。
作成方法に続いて、各項目をどうやってチェックすればよいかを
項目ごとに説明しています。
バイクの点検整備記録簿作成前に知っておくべき事
バイクの構造については、タイヤが前後に付いてる、ミラーが左右についているなどほとんどの項目は大半のバイクに共通するのですが、点検整備記録簿に記載しなければいけない項目の中で、いくつかの項目は全ての車種に共通しない部分です。
これを間違えて記入してしまうと、車検時に検査員によっては「あなた、これ本当に自分で点検したの?」となりかねない項目があります。バイクの構造に詳しい方には当然の話になってしまいますが、まず初めに自分のバイクの以下2点を必ず確認しましょう。
ブレーキの構造はドラムかディスクか
ブレーキは基本ドラムかディスクです。前後の組み合わせが異なる場合もありますのでご注意下さい。最近のバイクで、かつ車検があるような排気量の大きいバイクはほぼディスクブレーキでしょう。
- 前後ディスクブレーキ
- フロントディスクブレーキ、リアドラムブレーキ
- 前後ドラムブレーキ
このように金属の円盤が付いていれば、それはディスクブレーキです。
ドラムの場合は外からは見えませんが、同じようにホイールにブレーキは付いています。ワイヤーが接続されている丸い部分があればドラムブレーキです。
ドラムブレーキがどのようなものか見てみたい方はこちらの画像検索からご覧下さい。
動力伝達装置の構造は?
動力伝達装置なんて書くと余計にややこしい感じがするのですが、大雑把に言うと構造は3種類です。
- チェーン駆動
- シャフト駆動
- ベルト駆動
要は何によってエンジンの動力をタイヤに伝えているかですね。
シャフトはBMWやヤマハの一部、テネレやFJ、V-Maxもシャフトドライブだった記憶があります。ベルト駆動はアメリカンタイプに多いですね。ハーレーダビッドソンなど。一般的なバイクはほとんどがチェーン駆動です。
バイクのシャフトドライブの画像検索はこちら。バイクのベルトドライブの画像検索はこちら。
記録簿の裏面について
ダウンロードして頂くファイルには裏面記載内容がありませんが、実際の点検整備記録簿には裏面もあります(無いものもあるかも知れませんが)。
裏面には記録簿の書き方についての記載があります。クリックで拡大しますので気になる方はご覧下さい。
まずは点検記録簿をダウンロード
バイク用ユーザー車検書類ダウンロードページで、バイク用の点検記録簿だけでなく、バイクのユーザー車検に必要な書類が全て揃いますので、まずは書類をご用意下さい。
二輪自動車点検整備記録簿の完成見本
こちらの完成見本は「フロント、リア共にディスクブレーキ」「チェーン駆動」のバイクを想定して作成しています。異なる駆動方式、異なるブレーキを搭載しているバイクをお持ちの方は見本以降の説明を参考に作成して下さい。
赤色のチェック
この赤でチェックされている項目が点検が必要な項目です。
青色の枠と文字の部分
枠の中は適宜漏れなく記載して下さい。ナンバープレートの欄は車体番号でも構いません。走行距離は点検を行った日時の走行距離を記入します。日付は点検年月日、整備完了年月日が同一でも問題ありません。
交換部品の欄の記載
この見本に書いてある3つの交換項目ですが、E/G Oilはエンジンオイル、O/Eはオイルエレメント(オイルフィルター)、B/Fはブレーキフルード(ブレーキオイル)の略です。もし交換をしていない場合(特にブレーキオイル)は、当然書かなくても構いません。交換していないからといって車検に不合格にはなりませんのでご安心下さい。
黄緑色の枠について
ここがバイクによって変わる部分ですのでご注意下さい。見本では斜線を入れていますが、これは入れなくても大丈夫かと思いますが「このバイクにはそれは付いてないよ」と構造を把握していることのアピールになるかと思いますので、入れておいた方が良いかも知れませんね。
左側の枠は制動装置、ブレーキの欄です。もしドラムだった場合は枠線内チェックボックスにチェックを入れます。右側動力伝達装置に関しても同じです。
行った作業を記入する方法
記録簿の左上にある表の拡大表示がこの画像です。
ここからわかるように見本のチェック、レ点は「良」を表しています。
もし修理や清掃、調整などを行った場合は左の記述を用いて記録簿のボックスに記入します。
ここまで見本通りに点検整備記録簿が作成されていれば車検の際に提出する書類としては問題なく完成しています。
それでは各点検項目について説明しますので、点検の方法がわからない方は以下もお読みください。
点検整備記録簿の項目別点検方法について
見本の点検記録簿の左上から順に説明します。
かじ取り装置
ハンドル
左右に振ってもガタが無いか、取り付けの緩みがないか、走行に支障のあるような不具合がないかをチェックします。
フロントフォーク
フロントフォークに損傷はないか、曲がりはないかをチェックします。
ステアリングステムの取り付け状態と軸受部のガタは、俗にいう三つ又ですね。フレームとステアリングを繋いでいる部品です。この取り付け状態はどうかを確認します。フォークを止めているボルトの締め付け、ステムのトップ、ベアリングのガタは本来はフロントを持ち上げて確認するとわかりやすいですが、フロントブレーキをかけた状態でバイクを前後に揺すってガタガタするような状態では、ベアリング交換の必要があるかも知れません。自分で判断出来ない場合はバイクショップに点検してもらいましょう。
制動装置
ブレーキ・ペダルおよびブレーキレバー
右手のフロントブレーキ、右足のリアブレーキ共に若干の遊びがあるか、また効き具合は正しいかを確認します。
ロッド及びケーブル類
リアブレーキは複数のシャフトがリンクして動作していますので、それらに緩みやガタが無いか。ケーブルはドラムブレーキになりますが、アウターチューブの破れや傷などがないかを確認します。
ホース及びパイプ
ディスクブレーキは油圧ブレーキですからレバーからブレーキキャリパーまでオイルホースで接続されています。このホースの接続部よりオイル漏れが無いか、ホースの劣化度合いはどうかを確認します。軽くクニャクニャと曲げてゴムに亀裂が多いようであれば早急に交換しましょう。
マスタ・シリンダ、ホイール・シリンダ及びディスク・キャリパ
左の写真の黒いパーツがブレーキキャリパ(ディスクキャリパ)です。
マスタ・シリンダの画像が無いのですが、フロントならハンドル右のブレーキレバーが繋がっている四角い(または丸い)箱ですね。オイル残量が確認できるように小窓があるものです。
ホイールシリンダはドラムブレーキのブレーキシューを押し広げる部品です。これは分解しないと見えないので確認は難しいかと思います(確認するためのサービスホールが開いている可能性もある)。
リアのマスタシリンダは左の写真のステップ上部。
ブレーキペダルに直結して、ブレーキを踏むとシャフトが入っていくパーツです。
ブレーキ・ドラム及びブレーキ・シュー
これは現物を見たことが無ければさっぱりわからないと思いますので、こちらの画像検索で確認すると良いかと思います。
ディスクブレーキは左右からサンドイッチにして止める、ドラムブレーキは内側から外側に向けて広がるように押さえて止めるブレーキです。
ブレーキ・ディスク及びパッド
ディスクパッドに摩耗はないか、ブレーキの引きずり(ブレーキが操作していないのに効きっぱなし)はないか、ブレーキディスクの摩耗はないかを確認します。
ブレーキはパッドだけでなくディスクもすり減ってきます。耳が出てると言われますが、パッドの当たり面とディスクの縁の部分に段差があり、それが大きすぎるとブレーキディスクが摩耗しています。ディスクには摩耗限度というものがあり、ある一定の厚み以下になると交換しなければいけない部品です。バイクの場合、小石が挟まったままでレコードのように溝が入る場合もありますので、注意して点検して下さい。ブレーキは命に関わるパーツです。摩耗限度はサービスマニュアルに記載されていますが、わからない場合、不安な場合は必ずバイクショップで点検、確認してもらいましょう。
またブレーキの引きずりに関してですが、宙に浮いた状態でホイールを回して「シャラ、シャラ」と軽い音がする程度の接触であれば問題ありません。
走行装置
ホイール
タイヤの溝、空気圧、タイヤの状態を点検します。亀裂や異常摩耗、ワイヤーが出るまで磨耗しているようだと車検に通りません。あとはホイールの取り付けボルト、ナットの緩みなどが無いか。またホイールベアリングのガタはないかを確認します。センタースタンドがあるバイクなら前後のホイールベアリングのガタはチェックできますが、付いていない場合はリフトさせるか吊るすかして確認する必要があります。
暖衝装置
これはミスプリのような気がするのですが、この記録簿に記載の通り暖衝装置と書きました。衝撃を和らげるパーツのことなのでおそらく緩衝装置が正解かと思います。余談は置いといて。
サスペンションアーム
リアサスペンションとその周りの可動部の取り付けに関して緩みや損傷がないか確認します。
ショック・アブソーバ
リアショックのオイル漏れや損傷を点検します。
動力伝達装置
クラッチ
クラッチレバーに適切な遊びがあるか、またクラッチがきちんと切れる、きちんと繋がるかどうかを確認します。
トランスミッション
多くのバイクはミッションケースがエンジンと一体になっています。トランスミッションはエンジンの半分より下側に位置するものが殆どですから、その周辺にオイル漏れがないかを確認します。ミッションオイルが別の車両はミッションオイルのオイルレベル、エンジンオイルと共通の場合はエンジンオイル量が適切なレベルかどうかを確認します。
プロペラ・シャフト及びドライブ・シャフト
シャフトドライブの車両の点検項目です。ショックの上下運動で稼働するシャフトのジョイント部にガタがないか、連結部の緩みなどがないかを点検します。
チェーン及びスプロケット
チェーンの緩みが適切かどうか、スプロケットの摩耗はないかを確認します。以前交換した際の写真がありましたので、摩耗を確認する目安にして下さい。
左が摩耗したフロントスプロケット(エンジン側)です。
見ての通り右が新品ですが、恐ろしく違うのがわかりますね。このまま使い続けるとチェーンまで傷みますので、放置すると結局は高くつくという部品の代表です。
ドライブベルト
ベルト駆動のバイクの点検項目です。ドライブベルトはコグドベルトといって凸凹したベルトを使用しています。その凸凹に傷がないか、無くなっている場所がないか、全体的な摩耗と損傷を点検します。
電気装置
点火装置
点火プラグの点検です。記録簿に記載されていますが、イリジウムプラグ、白金プラグの場合は省略出来ます。点火タイミングについては最近のバイクだとコンピューター制御ですからまず狂うことはないでしょう。キャブ車の場合も自分で点火タイミングを遅角、進角させたりしていない場合は狂ってはいないはずですが、ある回転数以外でエンジンがボソボソするなどを感じる場合は一度点検した方が良いかも知れません。
バッテリ
ターミナル部の接続状態を確認します。バッテリ本体のプラスとマイナス端子を目視確認し、粉が噴いてる場合は綺麗に掃除(素手は危険です)して腐食がないか目視で確認しましょう。
原動機
本体
記録簿ではこの本体のチェック項目はエアクリーナーに関してですね。フィルター(エアクリーナーエレメント)の詰まりや汚れの点検をします。低速及び加速の状態、排気の状態というのは二次エアを吸っているかどうかの確認です。エアクリーナーボックスからエンジンの吸気部までの構造体は樹脂またはゴムのチューブで接合されていると思いますが、その間に亀裂や損傷がないかも十分チェックしましょう。排気ガスが、言葉にするのは難しいのですが「目がチカチカするような排気ガス」だと燃焼に問題があるかも知れませんので要チェックです。
潤滑装置
これは単純にオイル漏れがあるかどうかの点検です。普段からこまめに洗車や掃除をされている方ならすぐに気付くのがオイル漏れです。角接合部からの少々の滲みがあるなら、出来る限り拭き取っておきましょう。こまめに掃除することによって「どれくらいの間隔でまた滲み出すか」がわかりますので「そろそろ直さないとやばい」とか「オイルが減ってるんじゃないか」などの心配をしなくて済みます。
燃料装置
燃料供給経路の点検です。タンクからインジェクター、キャブレターまでの燃料ホースに劣化や漏れがないか、単気筒以外だとスロットルバルブの連動がちゃんと同期されているかを確認します。チョークはキャブ車の場合は付いているバイクもありますが、インジェクションのバイクはほぼオートチョークですから問題ありません。
冷却装置
クーラントの水漏れですね。ラジエターからサブタンク、全ての水の経路に漏れが無いか確認します。クーラントは漏れると跡が残るタイプのものが多いので、水回り経路周辺に漏れた痕跡がないかも十分チェックしましょう。
ばい煙、悪臭のあるガス、有毒なガス等の発散防止装置
ブローバイガス還元装置
これはクランクケース内のガスを吸気に戻している装置です。クランクケースからエアクリーナーボックスあたりに伸びているホースを探して、劣化がないか点検します。
燃料蒸発ガス排出抑止装置
これは気化したガソリンが大気に解放されないようにする装置です。これもメカに詳しくなければ難しいかも知れませんね。お乗りのバイク名+燃料蒸発ガス排出抑止装置で検索して、どんな形でどこに付いてるのかを確認してから点検すると良いでしょう。
一酸化炭素等発散防止装置
これが一発でわかる人はまずこのサイトは読んでいないと思います。ちょっと難しいですが、ホンダのサイトで説明がされていますのでご覧下さい。
エグゾースト・パイプ及びマフラ
取り付けの緩み及び損傷、マフラの機能の点検です。これは簡単というかマフラは消音器ですし、排気漏れはとにかくうるさいので、おかしいと思ったら音の出所を探して取り付けに不具合がないか、穴あきや亀裂がないか確認します。マフラー関連はとにかく火傷に注意して点検を行って下さい。数分アイドリングしただけでも、エキマニなどはびっくりする温度になってますのでご注意を。
フレーム
大きな事故を起こしたことがあるバイク、古い鉄のフレームのバイクは要注意です。緩み、サビなど強度不足が起きていないかどうかを点検します。
その他
シャシ各部の給油脂状態の点検です。動くところにはきちんとグリスアップがなされているか、抵抗が大きい可動部はないかを点検します。
以上がバイクのユーザー車検の際の点検項目のチェック方法です。
おわりに
環境関連の部分の点検は少々難しいと思いますが、自分のバイクのエンジンに関してだけで良いので、一度調べておくと知識も増えますし構造がわかるので面白いですよ。
全てを100%完璧に理解して点検作業をするのは難しいかと思いますが、とにかくわからなければネットで検索して、それがどんな形でどこに付いてるのか、何をしてる部品なのかを調べていくことによってどんどん自分のバイクに詳しくなっていきます。
最初は大変だと思いますが、少しずつやればそう難しくはありません。また構造が分かればバイクの知識が増してさらに愛着も湧きますので、頑張って下さい!