点検整備記録簿に基づく車両の点検項目について
ここではユーザー車検の際に提出する必要のある点検整備記録簿に記載の各点検項目について詳しく説明しています。それぞれの項目をどうやって点検すれば良いのか、何を見れば良いのか分からない場合は当記事を参考にして下さい。
点検について
ここでは以下ダウンロードページにある点検整備記録簿を基本に、各点検項目に関する説明をしています。これより先を読み進められる方はダウンロードファイルを印刷し、お手元に用意されてからご覧になられる事をお勧めします。
左上の項目から右に向かって順番に点検出来るように記録簿は作られていますので、左上の項目から順に説明していきます。
運転席で
ハンドル
ハンドル操作具合です。エンジンが掛かっている状態、掛かっていない状態共にハンドルを左右に振って遊びが大きくないか、操作に違和感はないかを確認して下さい。エンジンが掛かっていない状態とは、キーを抜いた状態ではなく、キーを挿して1段階回した状態(ACC)で操作しないとハンドルロックが掛かってしまいます。ボタンで始動する車の場合、ブレーキを踏まずにスタートボタンを押せば同じ状態になりますので、そこで確認するようにして下さい。
ブレーキペダル
これもエンジンオン時、オフ時共に操作して確認して下さい。力強く踏んだ際に、床まで届かないのが普通の状態です。しっかり踏んで、そこからジワジワとペダルが奥まで入っていくようであれば問題があるかも知れませんので、そのような状態であれば一度整備工場に相談された方が良いと思います。
駐車ブレーキレバー
一般的にはパーキングブレーキやサイドブレーキと呼ばれていますね。近頃は手で引くタイプはなかなか見なくなりました。手で引くタイプだと、妙に軽い、すごく上まで引けるようであればワイヤーが伸びている可能性がありますので調整する必要ありですから整備工場へ。半分から半分ちょい引いた時にグッと力が入る感じが通常の状態です。
足踏み式の場合は、これもブレーキと同様、床まで(これ以上踏めないというところまで)軽く踏めてしまうようであればワイヤーが伸びているかも知れません。
電気でスイッチを押すタイプのブレーキは機械でスリップ具合を確認するしかありません。検査ラインでもこれをする必要があるので、テスター屋で診てもらうついでに、その操作を練習すれば良いと思います。
オートマ車の場合は、ドライブに入れた状態で駐車ブレーキを掛け、車が前に進んでしまうかどうかが1つの目安になるでしょう。しかしこれだけでは100%確実な判断は出来ませんので、怪しいと思ったら工場へ。
※テスター屋とは?
テスター屋とは、陸運局内で検査される項目について予め検査してくれる「予備車検場」と呼ばれる施設で、陸運局の周りに数件あります。探す際は「陸運局名+テスター屋」「都道府県名+テスター屋」か、テスターを「予備検査場」に変えるなどのワードで検索してみて下さい。
クラッチペダル
近頃では非常に珍しいマニュアル車ですね。これを見て懐かしいと思われた方もおられるでしょう。
クラッチは、車によって重さが全然違いますし、慣れていないと分かりにくいのですが、使用者であれば普段から乗っている訳ですから大丈夫でしょう。
「滑っている」状態は、ギアを入れて発進する際、クラッチから足を離しても車が進まない状態なので、このタイプの故障は誰にでもわかると思います。
この逆で、床までしっかりと踏んだ状態から発進するためクラッチを離していく。
ペダルが床から少しでも離れた状態で発進しようとするのはなんらかの異常があると考えられます。
通常は床からペダルが結構離れたところからクラッチは繋がろうとしますので、前述のような症状があれば整備工場へご相談下さい。
ボンネットを開けて
最上段、中心より少し右の欄です。
冷却装置
ファンベルトと呼びますが、近頃はベルトで回っているファンはあまり見ません。ファンはエンジン温度を感知してコンピューターでオンオフ動作をしています。ですからここでチェックするのはエンジンの横あたりに見える頑丈なゴムで出来たベルト全般です。
この写真のようなものです。このベルトは内側がイボイボというか、初めから切れていますが多くの車に使われているのはまっすぐな溝が切られているタイプです。この溝にヒビ割れなどが無いか、ベルトの背中の部分が摩擦で磨かれたようにピカピカになっていないか、見た目に古びた感じがしないかなどを点検します。様子がおかしいと思ったら整備工場へご相談下さい。
水漏れについては、使われている冷却水の色が確認出来るのであればその色の水がどこかから漏れていないかをチェックします。過去に漏れた履歴があり、それが乾いた状態になると白くかすんで粉っぽい感じの跡が残っているはずです。そのような漏れ跡がないかをチェックします。
あと冷却水には独特の匂いがあります。一度嗅ぐと忘れないと思うのですが、これは嗅いだことがなければ分かりませんので、なんか変な匂いがするなと思ったら工場へ。
エンジンが熱い時、絶対にラジエターキャップを開けたりしないで下さい。冷却水が噴き出して大火傷を負います。加圧された状態ですから沸点は100度以上。高温の液体が噴き出すので非常に危険です。また基本的にエンジンが熱い時はどこにも触れてはいけません。
ギヤボックスおよびパワーステアリング
パワーステアリングの取り付け状態、これはリフトに車を上げずに一人で確認するのは困難です。ほぼ不可能に近いと思います。最初の項目、ハンドルを振ってみた際に違和感がある、遊びが大きい際はここに問題がある可能性があります。
オイル漏れに関しては、普段駐車している場所から車を移動、その駐車場の地面を見てオイルが漏れた形跡があるかどうか確認して下さい。漏れた跡、地面にオイルが染み込んでいるようであれば車から何かの油が漏れているかも知れませんので、工場にて確認してもらうと良いと思います。
マスタ・シリンダ
ボンネットを開けた一番奥(フロントガラスの下)、運転席の前に付いている車がほとんどです。左ハンドルなら左側、右ハンドルなら右側です。稀に外車で右ハンドルでも左に付いている車がありますので少し古いフランス車などにお乗りの方は注意して下さい。
いずれ写真をアップしますが、金属の筒に樹脂のオイルタンクが乗っかっている物です。これがブレーキオイルです。その辺りから漏れがないか確認して下さい。ブレーキオイルは塗装を侵しますので、漏れているとその下辺りの塗装が剥げ落ちている場合もあります。
点火装置
いわゆるスパークプラグですね。ディーゼル車には付いていません。
これもプラチナプラグに変わって久しいので、無交換を謳うメーカーも多くなってきました。
この点検にはエンジン上部カバーを外さなければならない車も多く、プラグに電気を送るイグニッションコイルを取り外し、プラグレンチという専用工具を使ってプラグを取り外し、確認する必要があります。
点火プラグの状態以外の項目「点火時期」「ディストリビューターキャップの状態」とありますが、2000年以降(もっと古い話かも知れません)でディストリビューターを使って火花を飛ばしている車は見たことがないので「イグニッションコイル」と読み替えたつもりでここをチェックしましょう。火花を飛ばすタイミングは今はコンピューターが外気温などを計算して決めていますから、チェックのしようがありませんので良好で良いです。点火タイミングに問題があれば、基本的にエンジンはまともな動作をしません。
この項目は、基本的にはエンジン始動時に違和感がない、冷間時(エンジン始動直後)でも違和感がない、急にアクセルを開けてももたついたりしない、このように普通に走れている状態であれば問題ないでしょう。
しかし走行距離が10万キロを超えている車はそろそろプラグが寿命かも知れませんので、工場で交換を依頼するか、工具を用意し自分で交換するかして下さい。
バッテリ
現代ではJAFの出動率ナンバーワンがこのバッテリ上がりだと聞きます。前回交換したのはいつか覚えていますか?2年を目処に交換とよく言われていますが、一概にそうとは言えず乗り方や車の使い方で大きく寿命は変化します。
点検項目は、配線(バッテリーターミナル)やバッテリ本体の取り付けがきちんとされているかです。お乗りのお車のバッテリ位置を調べてチェックして下さい。蓋を開けたりする必要がある場合が多いのですが、大半の国産車はボンネットの中に位置しているでしょう。ベンツなどは始動用バッテリが別で搭載されているケースもありますのでご注意下さい。
毎日通勤や買い物などで20km〜30km走るという方は、どちらかと言うと長持ちしますが、週末のみ、しかもチョイ乗り、出掛けるたびに渋滞の中というパターンはバッテリへの負担は大きくなりますので、早めの交換をお勧めします。
目安としては外気温が低いと極端にバッテリの元気がなくなる、寿命が近づいてくるとエンジン始動時の「キュキュキュキュ」になんだか重たそうな感じがしてくるなどがあります。工場にはバッテリーチェッカーを備えている店も多いですから、心配であれば一度チェックしてもらいましょう。
バッテリは急いでいる時に限って上がったりするもんです。そうなったらかなりの時間を無駄にしますので早め早めの交換ですね。
エア・クリーナー
エアクリーナーエレメント(以下エアクリ)は、エアクリボックスを分解しないとチェック出来ません。親切な設計の車だとクリップを外すだけで簡単に確認可能ですので「〇〇(車種)エアクリ 外し方」などで検索してトライしてみるのも良いかも知れませんね。
古くなってくると枯れ草や虫の死骸が詰まり、空気がスムーズに流れなくなり燃費にも悪いですから、4年に1度くらいの頻度で交換する方が良いでしょう。
ちなみに土木現場によく出入りする車、砂埃が多いエリアで使う車は通常より目詰まりを起こしやすいため、通常使用より交換サイクルは早くなります。
エンジンオイル
車のメンテの超基本はエンジンオイル交換ですが、この記録簿上の点検は「オイル漏れ」の有無です。
先に述べたパワステのオイル漏れと同様、車庫の下の地面を確認するのが一番手っ取り早いと思います。エンジン本体の各接合部からの漏れもありますが、大量に漏れ出すと走行中にオイルの焼けた匂いがしたりします。放っておくと発火の危険もありますので、目視で確認してもわからない場合は工場へ相談して下さい。
国産車でそこまで漏れる車はあまり見たことがありませんが、輸入車の場合は要注意ですよ。本当に普通に漏れます。
キャブレター
これも既に過去のものです。原付ですらすでにキャブレターではなくインジェクション(燃料を電気で噴射する装置)に変わっています。
これに当たる部品は今はスロットルボディですね。エンジン吸気側(マフラーが出ている方と反対側)の太いパイプのどこかに付いています。取り付けにガタがないかを確認して下さい。チョークについてはコンピューター制御です。冷間時の始動後エンジンの調子が悪い場合それを疑うこともありますが、テスターなしでの確認は難しいかと思います。
公害発散防止装置
EGRバルブとか呼ばれる辺りです。整備士以外のほとんどの方にはもうお手上げの項目ですね。これを説明すると恐ろしく長くなってしまいますので、気になる方は以下リンクを参照して下さい。
配管などに損傷がないかチェックします。
エンジンの周りの様々なホース、それぞれをよく見て、亀裂や損傷がないかチェックして下さい。
車を回って
タイヤ
タイヤの状態です。基本はスリップサインで点検します。
上記リンク内動画ですが、かなり分かりやすい説明です。
ただこれだけではなく、車によっては偏摩耗が起きるケースもあります。ですからタイヤの内側もよく確認するようにして下さい。
右フロントタイヤを見るなら停止した状態でハンドルを右いっぱいに切ってエンジンを止め、路面との当たり面すべてを目視するようにして下さい。偏摩耗しているタイヤは内側が外側より減っている車が多いので(特に外車)しっかりとチェックして下さい。
さすがはダンロップ、偏摩耗についての点検動画もありましたので、是非ご覧ください。
クリップ・ボルト
ホイールナット、ボルトの締め付けです。これらを締め付ける工具は車載工具のセットの中にあると思います。分からなければマニュアルを参照して下さい。クリップボルトに限らず全てのボルトは規定トルクで締める必要があります。特にタイヤの取り付けボルトですから何かあれば事故に直結する部分。力一杯締めれば良いというものではありませんが、締め付けが甘い、緩くて外れてしまうと非常に危険ですので点検の際は気を付けて下さい。
検査員はすべてのボルトを点検ハンマーで叩いて検査します。緩みがあると音が変わるのですぐに分かります。同じように自分でボルト頭を軽く叩いて確認すると良いでしょう。
フロント・ホイール
ベアリングのガタを見ます。ジャッキアップした状態でタイヤを持って揺さぶった際にガタがあるとアウトです。車を運転する際、オーディオを切って耳を澄ませて運転、速度に合わせて「ゴー」という音が次第に大きくなる感じの異音があればベアリングに不具合があるかも知れません。
リア・ホイール
こちらもフロントと同じです。リアシートに誰かに乗ってもらって、タイヤ周りから変な音がしていないかどうか確認してもらうのも確認する1つの手段です。
燃料蒸発ガス排出抑止装置
こちらも長くなりますので気になる方は以下を参考に。
https://ja.wikipedia.org/wiki/チャコールキャニスター
ブローバイガス還元装置
前項と同様です。
公害発散防止装置も含めたこのややこしい項目は、車が出す様々な有害物質をちゃんと燃焼室へ戻して燃やし切ってからマフラーを通じて大気に放出する(出来るだけ放出しないようにする)機関ですよ、というイメージです。ですから、個々の場所などがわからないならエンジンルーム内のすべてのゴム配管に亀裂や劣化がないかしっかりと確認すると良いと思います。車の下から
ブレーキ
ブレーキホースの劣化、ペダルを踏んだ際のガタなどブレーキ全般をチェックします。
ブレーキキャリパーから伸びるゴムのホースなどに劣化が見られる場合は工場へ相談。
次の項目「ブレーキディスクとパッドおよびディスクキャリパ」も同じと考えて参考にして下さい。
ブレーキディスクとパッドおよびディスクキャリパ
ホイール内部に見えていると思います。このWikiに載っている写真は「ディスクブレーキ」です。この他ドラムブレーキがリアに使われている車両もあります。
違いについては以下が参考になります。
ドラムブレーキについては分解しないと確認出来ませんので工場へ。ディスクブレーキと違って摩耗する速度は遅いです。前後ディスクブレーキであったとしても基本的にはフロントブレーキの方がリアより減ります。ブレーキパッドは前2回交換で後ろ1回交換、といった感じのイメージです。
パッド残量に関しては、ブレーキキャリパーを縦方向から見て確認する場合と、斜めから覗いて確認する場合とあります。ホイールが取り付けられている状態でも、完全にカバーされていないタイプのホイール(アルミ5本スポークホイールなど)であればライトで照らすしながら覗くと確認できる場合が多いです。
サスペンション類
足回り各部リンク(接続部)、サスペンション取り付け部などにガタや緩みがないかチェックします。ブッシュのゴムに亀裂などが見られる場合は整備工場へ相談。
ショック・アブソーバ
油圧のショックだとオイル漏れの可能性もあります。目視で確認。走っていてポヨンポヨンした乗り心地、挙動を抑えきれていないような感じの車はここに不具合があるケースが多いです。そのような場合は特に念入りにオイル漏れなどないか点検して下さい。
トランスミッションおよびトランスファ
エンジンルームから確認のためのレベルゲージが見えており、それを使って油量が確認できるものもあります。あとは下回りにオイル漏れがあるか確認します。
オートマのオイルはエンジンオイルと違い、レベル確認の際は温間と冷間で基準となるオイルレベルが違うので、基本的には温間で調べた方が良いかと思いますが、ファンが回転するかもしれないという危険もありますので、確認される際は十分安全に配慮して行うようにして下さい。
プロペラ・シャフト及びドライブ・シャフト
FR(後輪駆動車)はプロペラシャフトですね。カップリングというシャフトとの接続部の緩みを点検。車の中央部を通るシャフトですから、ジャッキアップだけでは確認は困難です。
FF(前輪駆動車)はドライブシャフトブーツを確認します。ハンドルを片側の最大まで切ってエンジンを止めます。フェンダーとタイヤの間から確認出来ますので、破れなどがないか目視点検します。
亀裂の初期だとゴムがガサガサした感じに見えたり、指で広げると亀裂が沢山あったりしますのですぐにわかります。
すでに破れている状態だと、ブーツ周辺がグリスまみれ、ドロドロの状態になっています。破れてから時間が経過している場合は、グリスの上に汚れが付着して、イボイボの状態になっているケースが多いです。表面が何かおかしいと思ったら一度ウエスなどでその部分を拭って下さい。グリスだとそのイボイボが拭き取れます。
色は主に灰色にかなり近い緑といった感じの色のグリスを使っているケースが多いです。
FR:フロントエンジン・リアドライブの略。エンジンは前のボンネット内、駆動はリアタイヤという仕組みです。
FF:フロントエンジン・フロントドライブの略。エンジンは前のボンネット内、駆動はフロントタイヤという仕組みです。
デファレンシャル
FR車はリアバンパー下から前方向に覗くと見える場合が多いですが、基本的には確認にはジャッキアップが必要です。オイル漏れを確認するのですが、エンジンオイル等の漏れチェックと同様、車庫の下を見て左右リアタイヤの中心部あたりに何か漏れた痕跡があるならデファレンシャルからのオイル漏れの疑いもあります。このオイルは非常に硬いオイルです。ですから目視の際、ポタポタ出ている場合は絶望的です。動かすと被害が拡大する(デファレンシャル自体が壊れてしまう)可能性がありますので、この場合は工場に修理を依頼、積載車に乗せて車を運んで下さい。デファレンシャル自体が故障すると修理代は高いですよ。
FFの場合はオートマチックのケース内にあるため、AT付近にオイル漏れがあるかどうかチェックを行って下さい。
エグゾースト・パイプ及びマフラ熱害防止及びCO等発散防止装置
マフラーですね。排気漏れがないか、遮熱板がある場合それが外れかかっていたりしないかを点検します。これもエンジンが掛かっている車の下に入るのは危険ですので、工場で診てもらった方が良いでしょう。
耳で確認する場合は、窓を開けてエンジンを掛ける。ニュートラルで空吹かしをしてみて、うるさかったり異音がしたり(鉄板がビリビリ震えるような音)すると何か不具合があると考えられますので、整備工場へ。
マフラーから水を垂らしながら走る車を見たことがあると思いますが、ああやって走りながら外へ出すなら良いのですが、溜まった状態で長く放置するとマフラー内部からサビが発生する可能性もあります。ですから無理にとは言いませんが、普段あまり車を使わない方でも、時々はエンジンを掛ける。近所をぐるっと一周するなど(それだけではなかなか水は抜けませんが)、こまめに車を使うようにすると良いでしょう。
車枠、車体
これもリフトアップしないと確認は難しいです。普段の運転中「なんか不安定だな」「ギシギシと嫌な音がするな」など強度に関する不安がある場合、問題があるかも知れません。しかし現代の車体の製造方法だとこういった不安の原因が車体や車枠である可能性は低いです。フレームと車体が分かれていた時代ですね。現代の車の大半が採用するモノコックボディーだと基本的には車枠や車体に起因する軋み音や緩みのトラブルは出ません。
燃料装置
燃料タンクからエンジンルームまで伸びる配管や接続部、燃料タンク本体からの漏れを確認します。
ホースから漏れる事は少ないと思いますが、よく見られる症状は給油口からタンクまでのパイプから漏れるケース。これは意外と多い気がします(しかし国産車ではこれまで皆無)。この場合「ギリギリまで満タン給油すると毎回ガソリン臭い」という症状になります。給油口側に横Gが強く掛かったらガソリン臭くなる、などですね。
かじ取り装置のロッド及びアーム類
「ボンネットを開けて」で点検したパワーステアリングと同じようですが、こちらは構造体に問題があるかの確認です。ハンドルから伸びてくるシャフト、ステアリングラックから伸びるシャフトの端についているタイロッドエンドのブーツ(ゴム部)に破れなどがないか。シャフトが何かにぶつかったりして曲がってはいないかなどです。
これもハンドルを端まで切って、隙間から覗くと確認出来ます。簡単に言うと「押したり引いたりしてタイヤの向きを変えている部品」です。
据え切り(車が動いていない状態でハンドルを切る)を繰り返す運転をする方の車はこの辺りに問題が出るケースが多いです。
テスタ等で
この項目は基本的にテスター屋、または整備工場で調べる、点検、調整する必要があります。
ホイール・アライメント
極端な角度がついたような違法改造車に関してはここでは触れませんが、ホイールアライメントと言うと数カ所の測定値があります。
ですが通常の車検の場合、基本的には(トーイン)が測定されます。
サイドスリップゲージと呼ばれるものが市販されていますが、測定して調整、また測定といった手間と調整の難しさ、そのゲージ代金を含めて考えるとテスター屋に行く方が確実にリーズナブルです。
このサイドスリップの数値ですが、タイヤの摩耗度合いによっても変化することを覚えておいて下さい。新車時の数値は当然基準値ピッタリですが、タイヤが極端に摩耗していたり、偏摩耗していたりすると数値は変化します。
その状態で車検を受ける際、サイドスリップを調整し車検にパスしても、今度はタイヤを交換したらまた狂う。狂っている状態だと新品のタイヤが路面に接触する角度が若干変わっている訳ですから、メーカーが予想するような減り方でタイヤが減らない。そうなるとせっかく買った新品のタイヤが偏摩耗する可能性もあります。ですからタイヤ交換はスリップサインが出たら早めに交換するようにして下さい。安全面も含めてそれが一番安心です。
ブレーキ・テスタ又は走行テスト
ブレーキを踏んだ際にきちんと機能しているか、ロックするところまで効いているかを確認します。これも機械が無ければ測定不能です。
エンジン
吸排気が正常で、正しく燃焼が行われているか。これが行われていると排気ガスも車検基準値となります。排気ガステスターにてCOとHCの数値を測定します。
分解点検
ここは出来ない、やってはいけない項目ですから整備工場に依頼して下さい。
ユーザー車検・受験前簡易チェックシートのダウンロード
実際の車検のための簡易チェックを行うためのチェックシートを作成しておりますので、是非ご利用下さい。
さいごに
これだけの点検項目があることに驚かれた方もおられると思います。この中の一部の項目について合否判定を下すのが車検です。ですから車検とこの点検整備とは全く違う概念ですね。車を安全に使用するために行う法律で義務付けられた点検です。きちんと行い、もし不安があれば整備工場に相談しましょう。