車検ラインで検査員がチェックする項目とその流れ
点検整備記録簿を基に全ての項目を既に点検されたと思いますが、実際の検査ラインはどんな感じで進行するのかなかなか想像がつかないと思います。また全国どこでも同じ順番で検査ラインが構成されるという訳ではありません。ですからここに記載する検査の流れは、皆さんが行かれる陸運局の検査ラインとは違う可能性もありますので、検査の内容をグループ分けにしました。それぞれのグループがどのような手順で進むのを覚えておくと車検、検査ラインは難しくありませんよ。
電気周り、車体番号確認とエンジン刻印
全国どの陸運局でも一番最初はこれだと思います。車体番号確認を行う前に検査ラインに入ることは無いはずですから。
要確認:ホイールキャップは外れてる?発煙筒はある?
順番が回ってきそう(次が自分)となれば運転席の窓を開けて検査員を待ちます。
検査員によってはここで書類を渡せという方もおられるでしょうが、殆どの場合まずは電気のチェックからです。
検査員が車の前に立って、手を上げるなりして合図を出したら、フロント側ライト関係のチェックです。
順番をいちいち指示する検査員もいますが、ほとんどこっちが出したものに相手が「はーい、はーい」と言った感じで餅つきみたいな流れで進みます。
電気まわりチェック一覧
- ウインカー左右
- ハザードオンオフ
- スモール
- ヘッドライト
- パッシング
- フォグランプ(装備していればいれば)
ここで一旦全てのスイッチをオフにします。(消さないと車種によってはヘッドライトウォッシャーが動作するため)
そのままの流れで
- ウォッシャー液(ここでワイパーが動いたら3のホーン鳴らすで終了)
- ワイパー
- ホーン鳴らす
以上でフロント側からのチェックが終了します。
外観から室内
前述の作業、検査員が前に立って行う電気のチェックが終わったら、こちらに向かって歩いてきますので書類を渡します。
その間、歩きながらチェックしている項目は
- 運転席前ホイールクリップボルト締め付け
- フロントガラスに何も貼り付けてないか
- フロントガラスに飛び石による大きな欠けがないか
- フロントガラスに吸盤タイプのお守り、レーダー、小さいミラー、何か貼ってないか
とにかく「視界の妨げになるような物はないか」を見ています。
メーターとドアガラスの確認
まず書類を渡して、メーターに表示される走行距離と書類に記載の距離に相違がないか確認します。
その後各種警告灯が点灯、点滅していないかのチェックになります。
検査員の指示に従ってキーをオフ、キーをオン、メーターに表示されるインジケーターを見てもらいます。
その際、シートベルト警告灯も確認されるので、エンジンをかけてベルトを装着、警告灯が消えるのを確認してもらいます。少しは時間がかかる作業なので、この時点で発煙筒を見せると良いです。私がよくやってたのは、
「走行距離確認の際にメーターの前に発煙筒を置いておく」
でした。
この流れのどこかで「運転席窓の上げ下げをして下さい」と言われます。これは動作の確認ではなく、フィルムなど視界の妨げになるものを貼っていないかの確認です。前3枚「フロントガラス、左右ドアガラス」に何か貼るのは法律で禁じられていますので、当然チェックされます。
ですから「窓が閉めれない=確認出来ない=合格印押せない」となりますので、パワーウインドーに故障があれば合格は厳しいでしょう。
次は検査員がクリップボルトの締め付けを確認しながら車の後ろに移動しますので、今度は後ろの電気です。
リアの電気周り
流れはフロントと変わりません。こちらが作動させて検査員が確認したら「はーい、はーい」と進みます。
- ウインカー左右
- ハザード
- スモール点灯
- ストップランプ
- バックランプ(ブレーキは絶対踏んだままで!検査員を轢かないように!)
- バックフォグ(装備していれば)
注意すべきは、やはり5のバックランプです。ブレーキを踏んでバックに入れる。検査員がバックランプの点灯を確認した「はーい」が聞こえたらすぐパーキングに戻して下さい。
検査員はクリップボルト確認しながら助手席側より車を半周。ここで助手席ドアを開けて発煙筒をチェックするのですが、先に見せておくと検査員はそのまま車の前に移動しボンネットを開けるよう指示されますので、ボンネットを自分で開けます(検査員は開けません)。
ボンネット開けるとエンジン番号と車体番号の確認です。
エンジン番号は検査員が自ら確認します。
車体番号は、そこにカバーがある場合はカバーを開けて、検査員に確認してもらいます。
このカバーは検査ラインに入る前に外しておいても良いかも知れませんが、カバーは無くさないように気を付けてください。
ここからいよいよ検査ライン本番です。
書類の「自動車検査票1」は検査ライン内で必要ですので、すぐ取り出せるようにしておきましょう。
注:陸運局によっては、この電気周りの直後に排ガス検査を行う場合もあります。
ローラー上で
検査ライン入り口の停止位置まで移動し、信号が青になるのを待ちます。
移動する際、地面に描かれたラインに沿って、まっすぐ車を侵入させて下さい。窓から顔を出して右ハンドルなら右前輪を見ながら前進、ラインとタイヤの縁がまっすぐになるように進入して下さい。
停止位置で待ち、信号が青になったらスタートです。
車をゆっくりとラインに沿って進めて下さい。(アクセルは開けず、ほぼクリープのみで移動して大丈夫です)
※クリープ:オートマ車でドライブに入れてブレーキを離すと勝手に走り出す現象、クリープ現象のこと
サイドスリップ
最初はサイドスリップテスターです。テスターは床に敷かれている鉄板で、その上を通過して前輪を計測します。
ハンドルに軽く手を当てて、テスターに乗る少し手前でブレーキを踏んで軽く減速、そのままクリープで抜けていく感じで通過するのがコツです。
変にハンドル固定すると余計にダメです。緊張しているとなおさらですね。テスター屋で調整した後は間違いなく通るはずなので自信を持って通過して下さい。とにかくまっすぐ入る事を意識しすぎて変にハンドルを固定しようとしないのがコツです。
この後そのまま進むとローラーがありますので、前輪をローラーに乗せて停止します。窓から顔を出して前輪の位置を確認しながら進むのがコツです。
フットブレーキ
「フートブレーキ」と書いてる場合もあります。液晶画面のある新型のテスターだと音声で指示が出ますのでその通りに操作すれば問題ありません。
まずはニュートラルに入れてブレーキを離す。すると自動でタイヤ回りだします。指示を待って「ブレーキを踏んでください」が出ればブレーキを踏む。コツは「いきなりガツン」と踏むのではなく最初はジワリ、そのまま最後まで「グニュ〜っと踏み込む感じ」でやれば一発でOKが出るケースが多いです。
普段の運転で、シート位置をすごく後ろにして運転される方がおられますが、背中がシートにしっかり付いている状態で踏まなければブレーキが最後まで踏めなくなりますので、検査ラインではシート位置は少し前にしておくこともスムーズに進めるためのコツです。窓から顔を出す際も、左足はフットレストに乗せて踏ん張って、背中をしっかりとシートに押さえつけれる姿勢だと、窓から身を乗り出すような姿勢でも安定してハンドル、アクセル、ブレーキを操作できます。
サイドブレーキ
ニュートラルに入れたままです。そしてフットブレーキは踏まない。指示が出ればサイドブレーキを引きます(緩そうな場合は強めに引く)。電気のタイプはここでスイッチを押し(引き)ます。
人に言われて操作することが無い部分なので、一度駐車場などで練習をしておくと良いでしょう。
スピードメーター
メーター表示と実際の速度が合っているかのチェックを行います。
指示を待って、ギアをドライブに入れる。
指示が出たらアクセルを開けて加速し、メーターが40kmを表示したらパッシングで知らせます。数秒は40km一定で保持してからパッシングしなければ落ちやすいです。慣れないうちはちょっとやりにくいのですが、これにもちょっとしたコツがあります。
加速しながら合わせるのではなく、減速しながら合わせる
この意味は、一度しっかりと45km〜50kmまで加速するつもりでしっかりと踏む(全開はダメですよ)。そこから少しずつアクセルを緩めながら40kmに落としていくと合わせやすい、一定を保ちやすいです。
低めの速度から、アクセルを開けながら40kmに合わそうとする、つまり加速しながら合わせようとすると速度を一定に保ちにくくなるので、減速しながら調整していくという方法です。
また、エンジン回転数が高めになるので好みもありますが、ギア(セレクターレバー)はドライブではなく2速か3速でやった方がやりやすいような気がします。
この理由はローラー上では途中でギアが変わる、自動で変速されると40kmで安定させにくいので。
OKが出たらゆっくりブレーキを踏んで0kmまで落としてニュートラルに入れます。
そしてサイドブレーキをかけて次の光軸の検査を待ちます。
※検査ラインが古い機械だと、ここから光軸検査の位置まで前進しなければいけない場合があります。
光軸
次は光軸検査です。
掲示板の指示に従って下さい。
年式に依りますが、最近の車、検査ラインだと最初はロービームで検査されるはずです。どちらで合格するかは「テスター屋でどちらで調整したか」でわかります。
測定器が横から現れてすべて自動で検査されます。左右のライトの測定が終わると、また掲示板に指示が出ますのでその指示に従います。
私はハイビームでの検査の場合、ライトのスイッチはオフにしてパッシングのレバーを引きっぱなしにして「スモールなど余計なランプが点灯しない状態でハイビームを点灯させる」という方法で受けていました。
「前進して記録して下さい」との指示が出たら前進、少し進むと右側に「自動車検査票1」を差し込む機械がありますので、車から降りて検査票を
「矢印の方向、印字面が上」
で奥まで差し込むと「ガチャン!」とスタンプが押されますので、その後車に戻り前進。
次は下回りの検査です。
下回り検査は中央に穴の空いたエリアに入っていかなければいけませんので、この際も地面に描かれた線をしっかり確認しながらそれに沿って前進するようにして下さい。
下回り検査
車に乗ったら、次の下回り検査の位置まで前進します。
右前輪を停止位置の表示に合わせるところまで進んだら車を停止し、ギアはパーキングに入れてエンジンを止めます。
前輪が指定の枠内でちゃんと止まるように停止して下さい。行き過ぎたらバックで戻って停止位置に合わせます。
この状態で待つと車の下で検査員が点検を始めます。
コンコン音が聞こえますが、これは取り付けボルトの緩みなどを点検ハンマーで調べている音です。そのほかにはブーツやゴム部が破れていないかなどを目視点検しています。
検査員から「ブレーキ踏んで」とか「サイドブレーキ引いて」などの指示がありますので、その都度指示に従って操作します。
次にハンドルのガタを見るために「エンジンかけてハンドル振って」と言われますのでその通りに。ハンドルは左右に振るのですが、グルグル回すのではなく「右に左に」と振ります。
イメージは最初が時計の12時の位置なら、左は10時、右は2時くらいまでの幅で左右に振れば良いです。これを「はいやめてー」と言われるまで続けます。
ここでマフラーに不具合が無いか、穴あき、排気漏れなども検査されます。
何か不具合があれば「はい、降りてきてー」と呼ばれて、検査員は受験者本人に不具合箇所の確認をさせます。
その場合は車から降りて、検査員のいる地下に移動します。車を止めている横に階段があるのがほとんどですが、どこから移動したら良いか分からなければ、車の下を覗くと検査員がいますので、入り口、階段の場所を聞いて下さい。
次はいよいよ最後、排気ガスです。
ここから前進する際、前を見て「排気ガステスターがどこにあるか」を探しながら進んでください。
機械から伸びる長いワイヤーの先に金属の棒が付いているのが排気ガステスターです。ちょうど車の後端部がテスターの前にくる位置まで前進しておくと検査がやりやすくなります。
※検査ライン入り口で排気ガス検査が終了している場合もあります
排気ガス検査
排気ガス、COとHCの数値の検査です。
車を停止させ、パーキングに入れサイドブレーキを引きます。
排気ガステスターのセンサー(長い棒の先)をマフラーの穴から挿入します。浅すぎると検知できずエラーが出ますので、しっかりと入れて下さい。
その後測定時間がありますので暫く待ちます。ここでボタンを押さないとスタートしない場合があるかも知れませんが、その場合は指示が出ると思います。
結果が出たらテスターを抜いて元の位置に戻し、再度「自動車検査票1」に結果を記録します。
最後の合否判定
検査員がいるブースのようなものが検査ライン最後にあるはずです。
その検査員に書類一式を渡して確認してもらいます。全て合格であれば合格印を押してもらい終了です。
不合格であれば、内容を教えてくれます(下回りで不合格の場合は確認済み)。ライトで落ちたら「左が低い」とか「光量が足りない」とか。サイドスリップであれば「インに7振ってる」など。
記憶ではスピードの不合格に関しては教えると再検査の時に勘で合わせることが出来るので聞いても教えてくれなかった気がします。(例えば5km低かったと教えると再検査で45kmあたりでパッシングして無理やり通そうとする人が出るため)
おわりに
以上が検査ラインでチェックされる項目とその流れです。
全てにおいて共通するコツは「落ち着いて受ける」ことかも知れませんね。
サイドブレーキやブレーキ操作、クリープで車を動かす速度を調整するなどは、ユーザー車検を受けると決めたら普段の運転でも少し気を使って操作するようにすれば検査ラインの練習になるかと思いますので試してみて下さい。
また誰か練習を手伝ってくれる方がおられるなら、検査員役と受験者役で、特にライト周りのやり方などはこのページに書かれている内容を何度か繰り返してみると本番に慌てる事が無くなると思いますので良いかと思います(さすがに下回り検査やスピードメーターの部分は練習出来ませんが)。
実際、整備工場でもライトのチェックは二人で声を出して確認していますよ。
みなさまが無事に一発で合格される事を願います。